テーマ概要
医療施設等での栄養ケア計画で、患者に摂食・嚥下機能や消化管機能に問題がある場合、
栄養補給法を経腸(経口、経管)、経静脈の中から選択します。
それぞれにはいくつか方法があり、消化機能の問題の有無や誤嚥のリスクなど病態や状況を踏まえたうえで、栄養剤の長所・短所を理解した適切な栄養補給法を選択していく必要があります。
『レビューブック管理栄養士2023』では、p782~790に掲載されています。
出題傾向
「栄養補給法」は過去10年分(27~36回)の問題で、選択肢として88回がこのテーマに該当しました。また、このテーマでは大きく次の2つに分かれて出題される傾向があります。今回も実際に出題された問題と一緒に紹介します。
①中心静脈栄養輸液製剤(RB-p788~)
静脈栄養法には中心静脈栄養(TPN)と末梢静脈栄養(PPN)があり、それぞれ投与可能期間,エネルギー量が異なります。中でも中心静脈栄養で用いる基本製剤にはいくつか種類があり,それらに関する問題がよく出題されています。
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32回119問
静脈栄養法に関する記述である.正しいのはどれか.1つ選べ.
(1) 末梢静脈栄養法では,1日に2,000 kcalを投与できる.
(2) 末梢静脈栄養法で投与できるアミノ酸濃度は,30%である.
(3) 中心静脈栄養法は,1週間以上は実施できない.
(4) 中心静脈栄養法の基本輸液剤には,亜鉛が含まれる.
(5) 中心静脈栄養法は,在宅では実施できない.
正解(4)
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②経腸栄養剤(RB-p785~)
経腸栄養剤は、経管において投与される栄養剤です。大きく分けると天然濃厚流動食と人工濃厚流動食があります。人工濃厚流動食はさらに3つに分類されます。それぞれ,含まれている成分や適応している病態が異なるため違いを理解して適切な栄養剤を選択することが求められます。
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33回118問
70歳,男性.くも膜下出血後,意識がなく,経腸栄養剤のみにて3週間経過したところで,血清ナトリウム値150 mEq/L,ヘマトクリット値55 %,ツルゴール(皮膚の緊張度)の低下を認めた.投与エネルギー量の設定を変更せずに対処した栄養管理に関する記述である.最も
適当なのはどれか.1つ選べ.
⑴ 1.0 kcal/mLから2.0 kcal/mLの栄養剤に変更した.
⑵ たんぱく質エネルギー比率の低い栄養剤に変更した.
⑶ 脂肪エネルギー比率の高い栄養剤に変更した.
⑷ 投与するナトリウム量を増やした.
⑸ 投与する水分量を増やした.
正解(5)
30回117問
経腸栄養補給法が禁忌となる患者である.正しいのはどれか.1つ選べ.
(1) 口腔がん術後
(2) 食道がんによる通過障害
(3) 胃食道逆流症
(4) 下部消化管完全閉塞
(5) 脳卒中後の意識障害
正解(4)
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③リフィーディングシンドローム(RB-p790)
リフィーディングシンドロームは極度の栄養不良状態の患者に、糖を中心とした多量の栄養素を投与することによって、血中の電解質バランスが崩れてしまう状態のことです。絶食が続いた後に栄養剤で栄養補給を始めた場合などに多いため、「栄養補給法」で出題されています。しっかりメカニズムを理解しておけば、予防法やモニタリングの項目を選ぶことができるはずです。
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30回119問
長期絶食患者への栄養補給開始後のモニタリングに関する記述である.誤っているのはどれか.1つ選べ.
(1) リフィーディング(refeeding)症候群の評価には,血清リン値を用いる.
(2) エネルギー投与量の評価には,体重の変化を用いる.
(3) たんぱく質投与量の評価には,窒素出納を用いる.
(4) 糖質投与量の評価には,血清クレアチニン値を用いる.
(5) 水分投与量の評価には,水分出納を用いる.
正解(4)
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対策
この項目については、主に知識を問われる問題が多く出題されています。
『レビューブック2023』(p782-790)や『クエスチョン・バンク2022』(p706~714)には
栄養補給法・栄養剤の種類や概要などが分かりやすく表や図、イラストで分かりやすまとめてあります。
また、『なぜ?どうして?②人体の構造と機能/臨床栄養学①』でもストーリー形式で解説しているので、ぜひチェックしてみてくださいね
▼『なぜ?どうして?②人体の構造と機能/臨床栄養学①』3章 NST/栄養補給法「栄養補給の方法はさまざま」(p77~)
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