キャリアインタビュー 子供への食育活動:小野寺さん

近年,食と健康への関心がますます高まり,食育の重要性が再認識されるようになりました.
今回は子ども向けの食育講座の講師をしていらっしゃる管理栄養士の小野寺みゆきさんにインタビューしてみました!

Q 大学生の頃は,将来についてどのように考えていましたか?

実は管理栄養士として働くなんて,全然考えていなかったんです.
でも,せっかく頑張って管理栄養士を取ったし,1 回くらいは資格を生かして働いてみても面白いかもしれないと思って,委託の給食会社に就職しました.

 

Q 働いてみて,いかがでしたか?

最初に配属されたのは,病院給食の現場でした.
厨房で作って配膳して,片づけての繰り返しで,もう少し人と関わるような仕事がしたいなと思い,転職して社員食堂の管理栄養士になりました.
ここは提供した時のお客さんの反応を直接見ることができたので,楽しかったです.

私の場合,管理栄養士として働くというよりは自分が作ったもの・考えたものが形になって,人が喜んでくれることが大切だったことに気づきました.
おいしいっていう笑顔を見るとがんばろうって思えるんですよね.

 

Q そこから,どのようにして食育講座の講師に至ったのでしょうか?

大きなきっかけは直営の保育園の給食現場で,今の子どもたちの食を取り巻く環境を直接見たことですね.
小さいころからの食育の大切さをより強く感じました.

3 歳くらいでも自分よりも朝早くに保育園に来て,遅くに帰る子がいるってことを知ったんです.
お母さんがバリバリ働いていると,そういったお子さん,意外といるんですよ.
保育園では昼食・夕食と食べさせることができるから,まだいいですよね.
それなりにバランスのとれたごはんを数百円で食べさせることができるから.
でも,この子たちが小学校に上がったら,夕食どうするのかな,コンビニとかでお菓子買ったりするのかなって考えたら,何とかしなくっちゃって.

そんな思いで子供向けの食育の活動について調べていた時に日本キッズ食育協会の青空キッチンにたどり着きました.
ここの理念が「本物の食はからだと感性をつくり,子どもの未来を輝かせる」で,「これだ!」と思いました.

 

Q 青空キッチンってどんなところですか?

お料理を教材とした子ども向けの塾のようなところです.
月に2 ~ 3 回教室にレッスンに来てもらって料理をしながらいろいろなことを学びます.

料理は五感をフルに使うので,子どもたちの感性を伸ばすのに最適な教材なんですよね.
食材と楽しく触れ合いながら,食べることに興味をもつことが大切だなって思っています.

ゆくゆくは自分たちの身体が自分たちが食べたもので作られていることをわかってもらい,それを維持するために何をどれだけ食べればいいのか判断できるようになることが青空キッチンの目標です.

 

Q 青空キッチンのレッスンの流れを教えてください.

レッスンの最初にその日に作るお料理について説明してから,調理を始めます.

調理の合間にその日のテーマに合わせてワークを解き,それが終わったら,試食です.
「今日作るのはどんなお料理?」,「何でできているの?」と子どもたちとコミュニケーションをとりながら進めるようにしています.

 

Q 講師をやる上で,心がけていることは何でしょうか?

お料理教室ではない,ということを意識しています.
このレッスンの目的は食材と楽しく触れ合いながら,食べることに興味をもってもらうことですから.

例えばフォカッチャを作る場合でも,作れるようになることが目的ではありません.まず,フォカッチャはイタリアのパンですよ,ということを知ることで興味をもってもらう.
次に材料の粉がさらさらの状態から水を加えてねちょねちょしてくることで,どのように変化していくのか体験してもらう.
そのあとは調理を通じて,焼いた前後の生地の変化に興味をもってもらえるように工夫して進めています.

それから,子どもの目線で考えることも心がけています.
子どもたちのできることに合わせて目標を立ててレッスンを進めることを心がけています.

幼児さんたちにはとにかく食材に触れ合って楽しんでもらうことやできたという達成感を大切にしています.
小学校低学年の子たちは数字の勉強が始まるから,そこと絡めることが多いです.
「例えば1 人分に強力粉は40g 必要です,2 人分だと何g 必要?」,「5㎝幅はどのくらいの長さ?」など.
学校の勉強とリンクさせると,習ったことが実践で使えるという気づきがあると思います.

 

Q このお仕事の楽しさややりがいを教えてください.

お料理が出来上がったときに,生徒さんが楽しそうにしているときが私も楽しいです.

それに加えて,レッスンで作った料理をお家でふるまってくれたという報告をお母さんたちから聞くと,学んだことが子どもたちに定着していく様子が実感できてすごくうれしくなりますよね.

 

一番長く通っている生徒さんに,一番楽しかったことについて聞いてみました!

ステンドグラスクッキーを作ったことが

すごく楽しかったです.

キラキラしていてとてもきれいでした.

あと,レッスンで習ったドライカレーを

お家でお父さんに作ってあげました.

お父さんはいつもよりもたくさん食べてくれて,

おいしかったと言ってくれて,私もうれしかったです.

 

Q 小野寺さんが思う「食育」って何でしょう?

今でこそ「食育」って言葉がありますけど,元々は各家庭でおばあちゃんとかお母さんから教えてもらっていたことだと思います.
けれど,現代の社会だと,家族の形が変化したり,共働きが増えたりすることでお母さんの時間が取れなかったりして,こういうことをしっかり子どもに伝えるのが難しくなってきている.

でも,お母さんの気持ちもわかるんですよ.職場によっては早く帰りづらかいかもしれないし,家で急いで夕ご飯の支度しているときに教えてあげるのは大変ですよね.

そんな状況だから,家庭で難しくなった分を補えるような,第三の食育の場があるといいなって思っていました.
食育は,「食に対する興味をベースに何をどれだけ食べればいいのか感覚で分かっていて,ちゃんと自分に必要なものを選べるような感覚を養うこと」だと思います.
これさえ身についていれば,今は買えるところがたくさんあるから最悪お料理ができなくてもいいんです.

今の時代は,「選ぶ力を育むこと」が長い目で見た時に子どもたちの将来のためになるんじゃないかな.
将来的には,こういった力を伸ばすことができる食育スクールが野球や英会話と同じような習い事の選択肢になればいいなと思っています.

―――いかがでしたか?
望ましい食習慣は小さいころからの積み重ねによって養われていくものなんですね.
インタビューを通して,改めて実感しました.

ご協力いただいた小野寺さん,青空キッチンの生徒の皆さん,ありがとうございました!