キャリアインタビュー スポーツ栄養士:Sさん

毎回,読者の皆様からご好評いただいているキャリア特集.今回は,憧れている人も多いスポーツ分野をお仕事のフィールドとする管理栄養士さんからお話を伺うことができました.
「スポーツ栄養」という言葉だけを聞くと,華やかな仕事をイメージされる人も多いと思いますが,実際のお仕事はどうなのか,教えていただきましょう.

プロフィール:Sさん

管理栄養士.大学卒業時に管理栄養士免許を取得し,卒業後にスポーツ事業に力を入れる会社に就職.その後の転職により,プロ野球球団での勤務を経て,現在は陸上の実業団チームの管理栄養士として活躍中.

Sさんのキャリア:卒業,就職から初めての転職まで

大学在学中からスポーツ分野で働くことを目標として,研究や就職先を決めてきました.卒業後にスポーツ事業に力を入れる一般企業に就職し,管理栄養士として約2年の勤務の後に退職.その後,あるプロ野球球団に管理栄養士として転職しました.この時は特にコネなどはなかったのですが,タイミング良く仕事を得ることができました.球団勤務時は,主に2軍寮で調理業務を中心とした仕事を行いました.

─p29の上部に当時の勤務表を掲載しましたが,ハードスケジュールですね.

そうですね.選手の皆さんは朝早くから練習や試合の日も多いですが,一方でナイターの試合もあるため,勤務は早番,遅番,ナイター番の3パターンに分かれていました.深夜までの勤務など,肉体的に大変なところはありましたね.それと,1人で切り盛りすることが多かったので,プレッシャーもかなりあったと思います.
忙しい日々でしたが,この球団での仕事を通して,スポーツ分野で働くには高い調理技術と時間内に仕事を完結させる手際の良さが求められることを学びました.

▼ プロ野球チームの2軍寮で働いていた時の勤務パターン

「勤務パターンが3つもあると,休みでもなかなか気持ちが休まらなかったですね」とSさん.時間にもかなりバラつきがあり,負担が重かったようです.ちなみにSさんは寮に住み込みでなく,寮のすぐそばにお住いだったそうです.うーん,ハードワークですね.

スポーツ栄養士を目指したきっかけ

中学と高校で陸上部に所属していて,「強くなるための栄養」にとても興味がありました.高校2年生の時に図書館の本で「スポーツ栄養士」という職業を初めて知り,「これだ!」と思ったんです.幼いころから料理が大好きだったこともあって,管理栄養士になることを決心しました.

管理栄養士養成校を選ぶ際には,スポーツ栄養が学べそうな学校を調べて受験するくらい,当時から熱心だったと思います.大学3年時からはスポーツ栄養学の研究室に所属し,男子大学生の長距離チームのサポートと研究を行っていました.

2度目の転職で陸上の実業団チームへ

自分自身の結婚もあり,球団を退職して3カ月ほどのブランクの後,現在勤務している陸上の実業団チームに管理栄養士として就職しました.

このチームはこれまでに管理栄養士をチームの一員として雇ったことがなく,チームも手探りの状態でした.だからこそ,前職での経験を活かしたアドバイスなどができているかな,と思います.

仕事は,以前に比べれば体の負担は軽くなったと思いますが,陸上は国内,海外問わず合宿が多く,その間は献立作成,買い出し,調理のすべてを1日3食,休みなしで行わなければなりません.特に海外合宿では,国内で当たり前に手に入る食材がないケースも多く,臨機応変な対応力が求められます.

それと,私は結婚しているので,家族の理解がないと難しい仕事であるとも思います.

▼ Sさんが帯同した合宿などの年間スケジュール

上記以外に,4〜11月の週末は大会が多くあるので,月に1,2回はレースを観に行きます.合宿以外では,デスクワークのほか,時間があれば,できるだけ練習に行くようにしています.

さらにSさんに聞いてみました!

陸上選手は,栄養についてどんな意識を持っていると思われますか?

陸上は個人の力が結果にはっきり出るスポーツであるからか,栄養管理に真剣な選手が多い印象です.ただ,ストイックになりすぎてしまうケースもあるので,気になる選手には定期的に栄養相談(指導)を行っています.試合や練習のタイム,体重などのデータをもとに,実践的な指導ができるようにしています.

ご自身のお仕事が,選手の成績向上に良い影響を与えていると感じますか?

簡単にイエス,ノーと言える質問ではないですが,選手の記録や身体のアセスメント記録を用いて,栄養管理の効果を分かりやすくアピールし,認めてもらう働きかけは意識して行っています.

栄養管理という考え方自体が比較的新しいものであり,きちんと説明し,周りのスタッフや選手達が理解してくれないと,管理栄養士をチームに加えるメリットを感じてもらえません.

スポーツによって,また選手個々の力によって当然成績は大きく変わりますが,栄養管理や栄養指導を行った結果がどう出たか,という点を冷静に主張することは,スポーツ分野に栄養管理を根付かせるためにも大切だと考えています.

出産とその後のキャリアについて

うーん…現在は私一人が管理栄養士としてチームをサポートしているので,もし自分が妊娠した時に,続けるべきかどうか….スポーツ栄養はとても面白いのですが,「チームをベストの状態にしたい」と思った時に,冷静に考えて子どもを持つ管理栄養士の存在が邪魔をしないかどうか,まだなんとも言えませんね.陸上が好きで,チームを大切に思うからこそ,悩ましいところです.

でも,もし続けられないと判断した場合でも,一度退職し,周りの環境を整えてから出直そうと考えています.

スポーツ栄養士を目指す方へ

スポーツの現場で求められる管理栄養士は,ほとんどの場合「調理+選手の指導」ができることが最低条件だと思います.給食施設での大量調理経験や,献立作成能力は必須です.それと,スポーツに関わる管理栄養士は,勤務時間や休日が不規則な上に,長期間合宿で不在にすることも多いので,家庭とチームを両立させる体力と気力が必要です.要求されるレベルも高い仕事ですが,やりがいはあり,私自身はとても楽しんでいます.人材は不足気味だと思うので,興味があれば,ぜひ目指してほしいですね.

編集部より

スポーツ栄養自体はやりがいのある仕事ですが,チームの理解がもっと深まらないと,管理栄養士にとって働きやすい環境とは言えず,すそ野の広がりに限界があると感じました.管理栄養士側は適切な栄養管理の必要性を,仕事をこなす上できちんとPRし,チームの理解が進めば,今後さらなる発展も期待できるのではないでしょうか.Sさんをはじめとする若手のみなさまの活躍にも期待です!