データで読み解く 第32回国試レポート
2018年3月4日(日)に,第32回管理栄養士国家試験が行われました.ガイドライン改定から3回目の国試となり,合格率は過去最高となりました.メディックメディア編集部では,「みんなの解答(50ページ参照)」や「国試後アンケート」,実際に受験生へインタビューした結果をもとに,独自の分析を行いました.
第32回管理栄養士国家試験の結果について
平成30年3月4日実施 平成30年3月30日合格発表
1)合格基準 配点を1問1点として総合点119点以上の者
2)合格状況 受験者 17,222名 合格者 10,472名 合格率 60.8%
合格率は過去最高,受験者数は過去10年で最低
合格率は区分ごとにみても,大半が向上.
まずは受験生の区分別に合格率をみていきましょう.
管理栄養士養成校〔新卒〕の合格率は95.8%(昨年は92.4%),管理栄養士養成校〔既卒〕の合格率は20.8%(昨年は18.4%),栄養士養成校〔既卒〕は19.2%(昨年は19.3%)と,昨年に引き続き,大半の区分で合格率が向上しました.
全体の合格率としては,過去最高の60.8%をマークしました.
受験者数は減少が続く.区分ごとにみても,全区分で減少.
次に,受験者数の内訳をみていきましょう.
管理栄養士養成施設の増加により,近年増加傾向にあった管理栄養士養成課程(新卒)の受験者数が減少しました.
この区分の受験者数が減少するのは6年ぶりですが,まだまだ管理栄養士養成施設,またその定員数は伸びているので,来年以降の受験者数は持ち直しそうです.
栄養士養成課程(既卒)の受験者数は8年連続で減少しています.
特に今回は,前回受験者数より2,000人近くと大幅に減少.
今回の国試より受験日が例年より3週間ほど早まったことや,試験日が3月4日とひなまつり翌日だったことで,給食施設に勤める栄養士さん達にとっては,行事食の対応などがありスケジュール的に受験が厳しくなってしまったことも,受験者数激減の一因と考えられます.
ここからは,メディックメディア独自の調査をもとに,より細かくみていきましょう!
ここでしか知れない情報が満載ですよ!
合否を分けるのはどの分野?
第32回国試の合格者の平均正答率は74.4%でした.
これを各分野ごとにみると次の通り.
■第32回国試の合格者の平均正答率
分野(問題数) | 合格者正答率 |
---|---|
社会・環境と健康(17) | 71.5% |
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち(27) | 79.5% |
食べ物と健康(25) | 66.0% |
基礎栄養学(14) | 73.5% |
応用栄養学(16) | 84.4% |
栄養教育論(15) | 75.7% |
臨床栄養学(28) | 88.1% |
公衆栄養学(18) | 75.9% |
給食経営管理論(20) | 76.4% |
応用力試験(20) | 49.7% |
全体(200) | 74.4% |
やはり合格者にとっても「応用力試験」の壁は高いようで,約5割の得点となっています.
しかし,応用力試験を除いて,どの分野でも合格ラインの6割以上を得点しています.
特に,「応用栄養学」,「臨床栄養学」では8割以上の正答率となっています.
この2分野に加え,「人体の構造と機能及び疾病の成り立ち」や「基礎栄養学」の分野は,初出の内容が問われることが比較的少なく,『QB』や過去問でしっかりと問題演習していれば,得点できる問題が多いかもしれません.
一方で,「食べ物と健康」は7割以下の正答率で,他分野に比べて低い正答率となりました.
この分野はとにかく範囲が広く,知らないと解けない問題も比較的多いように感じます.
今回国試でも,「キャベツに含まれるS-メチルメチオニン(18047)」や「油脂の屈折率や発煙点(18052,18056)」,「食品の規格基準(18063)」など,初出の内容で受験生を惑わせる出題が数問ありました.
これらの結果を踏まえると,結局のところ過去問演習や基礎分野の理解を積み重ね,得点できる問題で確実に得点をすることが国試合格で重要といえるでしょう.
4肢選択肢での出題数は昨年並み
昨年は200問中31問が4肢選択肢での出題でした.
今年は27問と,大体昨年と同様でした.
単純に確率で考えると5肢より4肢の方が得点しやすいですが,実際には…
5肢の問題の方が正答率は高いのです.
4肢の問題はほとんどが応用力試験からの出題(27問中19問)であり,すべてが「最も適切なのはどれか」と問うものであることが,4肢選択肢が難しい理由に挙げられます.
※メディックメディアでは,受験生のみなさまに「みんなの解答」というサービスを通して,解答情報のご入力をお願いしました.
この入力情報をもとに,合格者と不合格者との正答率の違いを算出しました.
それぞれの定義と母数は以下の通りです.
合格者:119点以上の得点者.2,436人.
不合格者:118点以下の得点者.211人
正答率が低かった問題ピックアップ
それでは,今度は今年の国試で正答率が低かった問題をみていきましょう.平均して74%もの正答率を誇る合格者のみなさまでも,正答率が1〜2割の問題があるんですね.
正答率が低い問題は,解けなくても仕方ない部分がある一方,来年以降出題された場合は得点しておきたいもの.
ここでは2問を実際にご紹介するので,トライしてみましょう.
もちろん,今の時点では解けなくて当たり前です.解説をしっかり確認するようにしましょう☆
合格者の正答率が低かった問題トップ10
受験生のみなさまからのデータを編集部で解析してみました☆
「みんなの解答」をもとに算出.
- 応用力試験からは,18181・18184・18193の3問がランクイン.
最も正答率の低かった18184では,食材に含まれるたんぱく質の量を把握していないと解答できない出題でした.
今後もこういった実践的な問題が出題される可能性があるので,『QB2019』で内容を確認しておきましょう. - 18050や18087では,「日本人の食事摂取基準」や「食品成分表」の内容やその根拠について細かく問われました.
- 18066で問われた,食品のテクスチャーや化学成分を測定する機器については,初見の人も多かったかもしれません.
ちなみに,合格者の正答率が一番高かったのは,18127(胃食道逆流症の栄養管理)で,正答率は99.0%でした.『QB2019』で是非チェックしてくださいね!!
問題18012(合格者の正答率17.3%)
予防接種法による定期予防接種に関する記述である.
正しいのはどれか.1つ選べ. (1)都道府県が実施主体として行う. (2)65歳以上の者のインフルエンザ予防接種は,努力義務である. (3)小児の肺炎球菌予防接種は,努力義務である. (4)風しんの初回接種は,中学校1年生に相当する年齢時に行う. (5)結核のワクチン(BCG)は,不活化ワクチンである. |
合格者の選択率
(1) | 3.0% |
---|---|
(2) | 53.9% |
(3) | 17.3% |
(4) | 3.3% |
(5) | 22.4% |
この問題は得点したいですね☆
『QB2019』p49や『RB2019』p76〜78で予防接種について確認しておこう!!
正解(3)
定期予防接種の実施主体が市町村長であることや,各予防接種の接種時期については,これまで国試でも何度か問われていた内容です.
したがって,選択肢(1)と(4)は消去法で消すことができた受験生が多かったようですが,残りの選択肢で解答が割れたようです.
多くの受験生が選択した(2)ですが,65歳以上の者のインフルエンザ予防接種は,2001年に高齢者におけるインフルエンザの集団感染や症状の重篤化が社会問題となった経緯から,定期予防接種のB類に追加されましたが,B類疾病は努力義務ではありません!
なお,定期予防接種のA類疾病は努力義務です.
問題18050(合格者の正答率21.3%)
日本食品標準成分表2015年版(七訂)に関する記述である.正しいのはどれか.1つ選べ.
(1)食品群別の収載食品数は,野菜類が最も多い. (2)食品の検索を容易にするため,新たに索引番号が設けられた. (3)炭水化物の成分値には,食物繊維が含まれない. (4)食塩相当量には,グルタミン酸ナトリウムに由来するナトリウムは含まれない. (5)ビタミンCは,還元型のみの値を収載している. |
合格者の選択率
(1) | 54.2% |
---|---|
(2) | 21.3% |
(3) | 7.4% |
(4) | 12.3% |
(5) | 4.8% |
これは知らなかった人は得点できなくても仕方ない……
正解(2)
選択肢(1)と(2)で絞り切れなかった受験生が多かったこの問題.
食品成分の算出方法について問う選択肢(3)〜(5),特に(3)や(5)については,これまでにも出題があり,誤りだと判断できた受験生が多かったように見受けられます.
(1),(2)にあるような「日本食品標準成分表」の性質についての問いは初出かと思われます.
「日本食品標準成分表」の収載食品は合計2,191食品で,そのうち最も多い食品群は魚介類(419食品)です.
ちなみに野菜類は2番目に多い(322食品)です.うーん.編集部もこういった内容はノーマークでした.
おわりに
いかがでしたか?以前に比べて,国試は難問・奇問が減少していると感じますが,視点を変えて出題されると正答率がガクッと下がるようです.
でも,過去問をしっかり演習しておけば,合格ラインは安心して越えられます.『クエスチョン・バンク』と新登場の『レビューブック』を活用して,合格をつかみましょう☆